番外編 「北海道」視察 (上)民間主導

住民と国動かした熱意/要望年60回、署名60万人

高向巌名誉会頭(手前左)から誘致活動の説明を受ける島根、鳥取県両経済同友会のメンバー=10月9日、札幌市中央区の北海道商工会議所連合会
 山陰への新幹線誘致の可能性を探ろうと、島根、鳥取県両経済同友会のメンバーら11人が10月9、10の両日、新青森―新函館北斗駅間が2016年3月に開業した北海道新幹線の沿線を視察した。同行取材し、1~4月に連載した企画「さんいん改造論」の番外編としてリポートする。

 「新幹線が函館まで来た時は何とも言えない喜びだった。あとは(30年度末に開通予定の)札幌までの区間を着実に進めなければならない」。札幌市の北海道商工会議所連合会で高向(たかむき)巌名誉会頭(79)が力を込めた。


行政頼みに限界

 山陰新幹線(大阪-下関)と中国横断新幹線(伯備新幹線、岡山-松江)より1年早い1972年に、国の基本計画に盛り込まれた北海道新幹線(青森-札幌)。翌73年に整備計画へ格上げされたものの、景気後退で足踏み状態が続いた。

 新青森-新函館(現在は新函館北斗)間の工事実施計画が認可されたのが2005年。ところが再び暗雲が垂れ込めた。09年、当時の民主党政権が大型公共事業の見直しで、新規着工区間の整備白紙方針を打ち出し、未着工の新函館(同)-札幌間の行方が流動的になったのだ。04年の連合会会頭就任以降、誘致活動に尽力してきた高向氏は行政頼みに限界を感じ、決意した。「民間主導で進める」

 地元経済界の有志で、多い年には60回程度、国土交通省や財務省へ出向き、当初計画通りの整備を要望。高橋はるみ知事にも呼び掛け、地元選出はもちろん、細田博之衆院議員(島根1区)や石破茂衆院議員(鳥取1区)ら有力政治家へのアプローチを繰り返した。

 経済効果に加え、1988年に新幹線仕様で整備された青函トンネルを有効活用するため、「北海道新幹線開業は経済界にとって悲願だった」と高向氏。


関心低調な山陰

 さらに国を動かしたのが道民の機運の高まり。新幹線に乗った経験がある人が少なく、便利さを伝えるため、東北新幹線経由で函館から東京まで片道4時間で移動できる点をアピール。

 プロ野球・北海道日本ハムの主力選手を「ミスター新幹線」に命名してPRしたほか、地元の子どもたちを東北新幹線に体験乗車させ、感想文集を作って国交省に働き掛けるなど、精力的に誘致活動を展開した。

 札幌延伸を求める署名活動には60万人以上が応じ、2012年、札幌延伸の工事実施計画が認可された。

 「民間の経済界が主導しなければ、行政も道民も動かない」と高向氏。その言葉を受け、島根経済同友会の久保田一朗代表幹事(66)は「(山陰の新幹線計画で)中心となって動くのはわれわれだ」と意を強くした。

 ただ、住民の関心は低調だ。日本青年会議所中国地区協議会が、山陰自動車道の早期全線開通とセットで昨年行った新幹線誘致を求める署名活動は、目標の50万人に遠く及ばない7万2千人余りにとどまった。

 国を本気で動かすのなら、北海道に負けない民間主導の熱量が求められる。

2018年11月1日 無断転載禁止