女子ログ ワニの出現

 半年前に数語しかしゃべられなかった息子は、2歳になるのを前に話せる言葉が増えてきた。

 そんな彼にとって、姉の幼稚園への送り迎えの散歩道には、楽しいものがいっぱいあるらしい。

 きょろきょろしながら道を歩き、川を見ては「びーびー(石見の方言で魚)ちゃん!」「がーがー!(カモ)、ぴっぴー!(すずめ)」と指さす。道路沿いでは「ぶーぶー(車)ちゃん!」と、目に入ってきたものを、時にジェスチャーを交え、数少ない言葉で必死に伝えようとしてくる。

 そんな彼が今ハマっている言葉は、「ワニ」。絵本を見て覚えたのだが、日常生活で使うことはないだろうな…と思っていた。しかし、いつもの道を歩いていると、ある日川を指さし「ワニ!」と言い出した。驚いて川の方を見ると、藻が固まって浮いている。それは大小さまざまな形で何個も浮かんでおり、色も緑色で、なるほどワニに見えなくもない。子どもの想像力はすごいなぁと感心しつつ、わが家では川面に浮く藻はワニで定着していた。

 そんなある朝、いつものように息子が「ワニ!」と川を指さす。慣れた私が「本当だ、ワニがいるねー!」と答えると、前を歩いていたお姉さんが、ぎょっとした様子でばっと川を見た。

 お姉さん、この川に本物のワニはいないと思います、ごめんなさい…と心の中でそっと謝った。

 (松江市・ぽよ美)

2019年7月9日 無断転載禁止