女子ログ 当たり前の風景

 「君には宍道湖の良さは分かりにくいだろう」。東京での学生時代、お世話になったゼミの先生に突然こう言われて、ドキリとしたことがある。

 聞けば、仕事や観光で私の古里・松江を何度か訪れたという。遠くからせっかく来たからには評判の夕日を見ようとしたのだが、好天に恵まれて素晴らしい夕焼けを見ることができたのは、残念ながら1度だけだったそうだ。

 だからこそ、あかね色の空と、雲の絶妙なコントラスト、そして輝く湖面が今も目に浮かぶのだろう。逆にその光景を見慣れている地元の人には当たり前すぎて、先生のような感動は味わいにくいというのだ。

 ある意味、挑発的な言葉だった。何か言い返したいと思ったのだが、いい言葉が見つからなかった。そのもどかしさだけが今も思い出される。

 確かに松江に住んでいると、素晴らしい夕日を見逃してばかりだろう。観光客のように日没に合わせて湖岸にわざわざ足を運ぶこともないし、仕事や家のことで大忙しだ。

 ただし、たまたま通りかかった湖岸で、素晴らしい光景を目にすることは多々ある。こうした偶然の出合いというのは、ここに住んでいればこそだ。当たり前の風景にも、驚きや感動は結構あるんですよ、と今なら先生にうまく言えるのだが。

(松江市・さゆ)

2019年8月7日 無断転載禁止