ポルトガル人を引き寄せた銀

 歴史のロマンが現実味を帯び、わくわくした。桃山時代、日本の貿易国ポルトガルの商人が銀を直接取引するため、石見国を訪れていたことを示す文献がスペインで確認された。古地図を通して石見銀山の存在が西洋で知られていたが、往来を記した資料は見つかっていなかった▼文献は東京大大学院情報学環の岡美穂子准教授が見つけた。漢字で書かれた旧国名「石見」の文字に重ねるように「イワニ国 銀が大量にある。当地にはポルトガル人が来航する」というスペイン語の記述を読み解いた▼冒頭、歴史のロマンと記したのは、直木賞作家・山本兼一さん(故人)が著し、石見銀山を舞台にした戦国時代小説「銀の島」を思い出したから。物語では、世界の大航海時代、銀山情報を得たポルトガルの司令官が国王の密命を帯びて温泉津に来航し、銀山の占領計画を展開する▼山本さんは、戦国時代に「石見をはじめとする日本の銀が時代を動かす大きなエネルギーになった」と注目。大森や温泉津を訪れた入念な取材が作品の臨場感を高めている▼国境を越え、多彩な民族や物がアジアの海を行き交うようになった要因の一つが石見銀。それが石見銀山が世界遺産にふさわしいと認められた価値となった。ポルトガル商人が来航したなら、温泉津に上陸した可能性が高い。事実は小説より奇なりという。今後どのような発見があるのか、胸が高まる。(道)

2019年9月5日 無断転載禁止