ほろほろと

 自宅の庭に植えている自然薯(ヤマノイモ)の葉が大半、黄色くなった。つるの、葉の付け根にできるムカゴのささやかな収穫も、今回で最後だ。きょうは「立冬」。暦の上では、もう冬が始まる▼漢字で「零余子」と書くムカゴは「ぬかご」とも言い、見た目は大豆サイズのミニ・ジャガイモ風。昔は「むかごご飯」にして食べたが、近年はスーパーではあまり見掛けなくなった。地面に落ちた一つ一つの粒から、やがて芽を出すのだという▼昨年、種芋を植え、初収穫となる今年は、片手いっぱいずつを計4回、収穫。塩ゆでして晩酌のつまみにした。皮が付いたままなので野趣があり、小粒な分、控えめなほくほくさが味わえる▼面白いことに収穫時期になると、ちょっと触れただけで落ちる。つるを揺すると、ぽろぽろ音がする時もある。俳人の感性は、そんな特徴を見逃さないのか、小林一茶は「ほろほろと むかご落(ち)けり 秋(の)雨」と詠んだ。一茶を高く評価した正岡子規も「ほろほろと ぬかごこぼるゝ 垣根哉」の句を残した▼偶然にせよ、2人とも静かに落ちるさまに「ほろほろ」の言葉を選んでいる。晩秋の落葉に、この言葉を使ったのは清少納言。『枕草子』には「黄なる葉どもの、ほろほろとこぼれ落つる、いとあはれなり」とある。達人たちの言葉選びの妙に感心しながら、自然薯を掘るタイミングを考える。(己)

2019年11月8日 無断転載禁止