国際世論の論客

 中東は、日本にとって近くて遠い地域と言われている。原油輸入の大半を依存しながら、宗教や民族問題が複雑に絡み合って繰り返される紛争の歴史は、その時々の大国の思惑にも振り回されて日本人にとっては分かりにくい。中でもイラン・イラク戦争は1980年代、どちらが勝ったか負けたかよく分からないまま10年近く続き「イライラ戦争」とも呼ばれた▼その中東を舞台に極度に緊張が高まっている。米軍が駐留するイラク軍基地を昨日、イランが弾道ミサイルで攻撃した。イラン革命防衛隊組織のソレイマニ司令官を米軍が空爆で殺害したことへの報復である。イランで国民的英雄視された司令官への哀悼の意を込めながら「米国に死を」と報復を求める国内世論が高まっていた▼米軍の死傷者など被害は8日夕現在、確認されていない。米国、イランとも戦争への拡大は望んでいないとされるが、何としてもこれ以上のエスカレートは避けなければならない▼これほど緊迫している中東に、日本政府は予定通り自衛隊を派遣するという。日本経済の生命線を握る原油海上輸送の安全確保のためとはいえ、どんな不測事態に巻き込まれるか懸念が募る▼日本とイランは、貿易などを通じて長年かけて友好関係を築いてきた。同盟を結ぶ米国と友好国イランの間に入って日本が果たす役割は、両国に自制を求める国際世論の論客たることである。(前)

2020年1月9日 無断転載禁止