備えは十分か

 海外との人の往来や交易は、さまざまな恩恵をもたらす半面、時に感染症という厄介者も運ぶ。新型コロナウイルスの感染者が中国を中心に拡大し、日本も厳戒態勢が続く。訪日外国人客4千万人を目標に入国査証(ビザ)の発給要件緩和などアクセルを踏み続けていただけに、その影響が深刻化しつつある▼日本は古来、大陸からの感染症に悩まされてきた。『病が語る日本史』(酒井シズ著)によると、稲作が伝わる頃に入ったとされる結核に続き、仏教伝来後の天平年間には天然痘が猛威をふるう▼江戸時代になると、麻疹(はしか)が10~20年置き、インフルエンザも世界的な流行の後を追うように大流行。ともに江戸の死者が7、8万人に達した年もあった▼感染症の上陸は大陸から朝鮮半島、対馬を経て西日本から北上するパターンに加え、江戸期には外国船が入る長崎経由でも入ってきた。世界で約5億人が感染、死者が数千万人といわれる約100年前の「スペイン風邪」では、日本も約38万人の死者が出たとされる▼当時と違い、医療技術やワクチンなどの薬剤は格段に進歩した。一方で、空港や国際便、クルーズ船の寄港も大幅に増えている。前回の東京五輪の年の訪日外国人数は、まだ約27万人だった。往来が増えれば感染症のリスクも増す。船内での集団感染など不測の事態への備えは十分なのか。水際対応の再点検が必要だ。(己)

2020年2月14日 無断転載禁止