桜を見る会論戦/疑惑否定の裏付けを

 「桜を見る会」前日に開かれた首相後援会の夕食会を巡る疑惑を野党から連日追及され、安倍晋三首相が答弁に窮している。会場を提供した東京都内のホテルが、これまでの首相答弁と明らかに食い違う説明を文書で野党に伝え、疑惑が一段と深まっているからだ。ホテル側の説明通りであれば、政治資金規正法違反の可能性も出てくる。

 そんな中、小学校建設で国や大阪府などの補助金をだまし取ったとして詐欺罪などに問われた学校法人・森友学園の前理事長籠池泰典被告に大阪地裁で、懲役5年の判決が言い渡された。ただ森友問題の核心は、国有地が8億円余りも値引きされ、小学校用地として学園に売却された裏で何があったのか-だった。

 しかし政府は具体的な根拠は何一つ示さず、籠池被告が開校を目指した小学校の名誉校長だった安倍昭恵首相夫人の関与や財務省側の忖度(そんたく)について、ひたすら否定を重ねた。首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設計画を巡る疑惑でも同じように追及をかわし、一連の疑惑は今なお、くすぶり続ける。

 桜を見る会を巡っても、説明責任と真摯(しんし)に向き合おうとしない姿勢は変わらない。肝心要の資料などは出さず、とにかく疑惑を否定し乗り切ろうとしている。疑惑否定の裏付けを示し、論戦に決着をつけるべきだ。

 12日の衆院予算委員会の集中審議で質問に立った立憲民主党の辻元清美氏から「疑惑まみれ」などと批判された直後、首相は「意味のない質問だ」と自席からやじを飛ばした。「罵詈(ばり)雑言の連続で、私に反論の機会が与えられなかった」と一時は開き直ったが、低姿勢に転じ「不規則発言は厳に慎む」と謝罪した。

 予算案審議への影響を避けたいとの思惑からだろう。とはいえ、いら立ちをかなり募らせていると見て取れる。昨年の臨時国会でも、加計問題で首相側近の関与をうかがわせる文書の作成者をただす野党議員に「あなたが作ったんじゃないの」と、やじった。

 夕食会を巡って首相は「事務所職員は参加者とホテル側の参加費のやりとりを仲介したものの、ホテル側との契約の当事者は、あくまでも個々の参加者だ」と繰り返している。事務所は契約主体ではないから明細書は受け取っておらず、領収書もホテルが参加者一人一人に渡したとした。

 従って政治資金収支報告書に収支を記載する必要はないとの立場を強調する。だが辻元氏がホテル側に問い合わせた結果、主催者に明細書を発行しないケースは「ない」とし、代金は主催者にまとめて支払ってもらう-などの回答が文書で返ってきたという。

 この文書について首相は、事務所がホテル側に確認し「あくまで一般論で答えた。個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」と回答を得たと答弁。ところが与党筆頭理事が首相秘書を聴取し、ホテル側が「営業の秘密に関わるため」と言っていないことが分かり、野党は「虚偽答弁」と反発を強めている。

 政府は「首相が答弁した通りだ」としているが、規正法や、場合によっては有権者への寄付を禁じた公選法に違反する疑いもある。いま首相がなすべきは、明細書を取り寄せ、領収書の写しとともに提示することだ。

2020年2月20日 無断転載禁止