李承晩と「反日種族主義」

 韓国初代大統領の李承晩(イスンマン)氏(1875~1965年)の評価は日韓で相反する。韓国では戦後の混乱期に国を「自由の道」に導いた立役者。日本では一方的に日本海に漁船立ち入り禁止線「李承晩ライン」を設定し、竹島問題を生んだ元凶▼強硬な反日政策で知られる李氏は1910年の日韓併合を機にその度を強めたが、それ以前は日本に好意的だったという。韓国でベストセラーになり、日本語版が刊行された『反日種族主義』(文芸春秋)で知った▼同書は、韓国の歴史学者らが資料を基に自国の歴史認識の「誤り」を実証している。日韓関係悪化の要因となった元徴用工問題では、徴用工は自発的に朝鮮から日本へ渡り、強制労働は強いられていなかったとし、韓国側の主張を嘘と指摘。竹島問題も「独島(トクト)(竹島の韓国名)を韓国固有の領土と証明する証拠は一つも存在しない」と批判する▼驚くのは、同書を刊行したのが、李氏を尊崇するため設けられた李承晩学堂だったこと。その理由を同学堂の李栄薫(イヨンフン)校長は「独島紛争に見られるように李大統領の反日政策が残した副作用は大きく、その負の遺産を克服する」ためとし、両国民の連帯強化を標榜(ひょうぼう)する▼戦後最悪とされる日韓関係の下、島根県の「竹島の日」をあす迎える。韓国で反日感情が高まる中での”告発本”は、偏狭なナショナリズムに流されず、客観的な視点が必要だと訴え掛けている。(健)

2020年2月21日 無断転載禁止