先生、牛は元気ですか 農林高生、動物の世話できず

牛の餌やりをする教員。牛舎には鳴き声が響く=出雲市下横町、出雲農林高校
 早朝の張り詰めた空気の中、牛舎に地響きのような鳴き声が響く。「お腹がすいた」とせかすような声だ。少し離れた動物小屋から、ヤギやニワトリもにぎやかな声を上げ始めた。

 18日午前6時半、出雲農林高校(島根県出雲市下横町)。新型コロナウイルスの影響で休校が始まった4月20日以降、畜産加工や動物飼育を学ぶ動物科学科(各学年約40人)の1~3年生が当番制で担当する動物の世話は、一時的に教員の役割となった。午前7時ごろと午後3時半ごろの計2回、9人が交代で対応する。

 飼育する乳牛と和牛は合わせて約40頭。乾燥した草と、麦やトウモロコシなどの穀物を混ぜた餌を、一頭一頭決められた量を計って与える。スクレイパーという器具を使い、たまったふんを手作業で外にかき出す。作業着に長靴で忙しく動き回る教員をよそに、牛は悠然と餌をはむ。

 乳牛に搾乳機を着ける前に、手で乳を搾り、乳の色を見て体調の変化がないかどうかを確認するのも大切な作業だ。命を肌で感じる飼育から得られる学びは、オンライン技術では賄えず、タブレット端末の画面からは伝わらない。同科の福間浩文主任は「動物に触れないとできないことを生徒に体験させてやれないのが、もったいない」と嘆く。

 残念な気持ちは生徒も同じ。産業動物コースでは、課題研究で担当する牛がいるため、ほぼ毎日触れる。「牛はどう過ごしてますか」。担任が休校中の健康観察の電話をした際、気に掛ける生徒がいた。

 休校が解除される25日からは通常通りの体制に戻り、当番も復活する。「早起きして世話をするのが、普段は面倒くさかったかもしれないが、世話ができない悔しさや、動物に会いたいという気持ちが芽生えたはず。その気持ちを大切にしてほしい」。福間主任が、生徒に再びつなぐため、大切に育てた牛に目をやった。

2020年5月21日 無断転載禁止