球児への応援歌

 <雲は湧き光あふれて>の歌詞で始まる全国高校野球選手権の大会歌『栄冠は君に輝く』を作曲したのが古関裕而さん(1909~89年)。NHK連続テレビ小説「エール」のモデルとして注目を集める▼戦後間もない48年、主催者から依頼を受けると、甲子園へ駆け付け、無人のマウンドに立って周囲を見回しながら熱戦を想像しているうちに、メロディーが自然に湧いたという。それほどまでに心躍らせる舞台なのだろう。プレーを夢見る高校球児ならなおさらだ▼それから72年。今年は初めて、その舞台に主役の高校球児がいない夏になる。コロナ禍の影響で、春の選抜大会に続き、夏の甲子園の中止も正式に決まった。全国高校総体(インターハイ)をはじめ、他の大会も軒並み中止に追い込まれる中でやむを得ないが、当の球児たちの気持ちを思うとやり切れない▼特に山陰から選抜出場が決まっていた平田と鳥取城北の3年生にとっては、最後のチャンスも戦わずして奪われた。春は「夏を目指して頑張れ」と言えたが、今回は掛ける言葉が見つからない。自らの無力さを痛感する▼ドラマ「エール」ではちょうど、窪田正孝さん演じる主人公が早稲田大の応援歌「紺碧(こんぺき)の空」の制作に四苦八苦しているところ。この曲のヒットを契機に、古関さんは有名作曲家への道を歩む。できるものなら、球児を元気づける応援歌を天上から届けてほしい。(健)

2020年5月21日 無断転載禁止