助産師を目指す学生戸惑い 足りない授業どうなるの

オンラインで始まった講義に戸惑いながらも自学を続ける女性=出雲市内
 5月16日。助産師を目指す島根県出雲市内の女性(29)は、自宅で分娩に関係する専門書を開き、ノートパソコンに向かっていた。ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使い、首都圏に住む”まだ見ぬ”同級生9人と講師を結んで黙々と遠隔授業を受けていた。

 助産師に必要な看護師の資格を島根県内で取得。昨秋、東京都内の大学の助産学専攻科を受験し、4月から通う予定だった。その直後にコロナが襲った。

 本来は1日に90分授業を4、5こま受講するが、遠隔授業の今は2、3こまにとどまる。「足りなくなる授業時間がどうなるのか。分からない」と漏らす。

 実家近くに産婦人科があり、幼い頃から産声を聞いて育った。ある時、未熟児に接する機会があり、小さな体に宿る命を目の当たりに「助産師になりたい」との思いを抱いた。

 3月下旬、都内に引っ越した。家賃7万7千円のマンションに荷入れを終えた直後、オンライン授業が決まった。借りた部屋はまだインターネット契約をしていない。首都圏での感染リスクも考え、実家に戻ることを決断した。

 4月6日から遠隔授業が始まった。回線が遅くなるため、授業時は全員がカメラを起動させていないという。「正直、質問しにくい。授業について行けず、グループワークで後れを取っている」

 教員やクラスメートは実際に対面したことがない。戸惑いばかりだが、授業は淡々と進む。選んだ1年制の養成課程のカリキュラムは、通常であっても夏休みがないほど、こま数を詰め込んでいる。必然、学校側もハイペースで進めざるを得ない。

 最大の懸念は、分娩(ぶんべん)の実習だ。国家試験を受ける条件として、分娩に少なくとも10回は立ち会う必要があるが、医療現場は今、混乱している。

 「家族でも妊婦さんに寄り添うことが禁じられているのに、学生が分娩室に入れるのか。仮に入れても、妊婦さんに不安を抱かせてしまうのではないか」

 授業で学ぶはずの実技については、DVDが送付された。「映像でイメージトレーニングするしかない」と受け止める。

 幸い、都内の感染者数は減少傾向にあり、学校は来月から通常授業に入る。一方、開始2週間後には病院実習が始まる。「マイナスに捉えず、今だからできた経験と受け止めたい。医療人としての人生にきっと役立つと思う」。不安にかられながらも必死に意味を見いだそうとしている。

2020年5月25日 無断転載禁止