作り届ける、駅弁屋の意地です 弁当・仕出し業者の使命感

駅弁に地元の食材を詰める従業員=松江市平成町、一文字家
 「駅弁屋の意地です」

 新型コロナウイルスの影響で乗降客が激減したJR松江駅(松江市朝日町)に駅弁を運び続けた。弁当・仕出しの一文字家(同市平成町)の景山直観(なおみ)社長(58)は、利益を度外視してでも売店から駅弁を切らすことはなかった。

 鉄道旅行に欠かせない駅弁の売り上げは通常時の1割以下にまで落ち込んだ。それでも時間になれば列車は来る。

 「地元企業として社会的責任がある」

 使命感を燃やす社員たちが早朝から出社し、地域の食材を使った調理に励んでいる。

 新型コロナの影響で弁当販売の競合が増えた。店内営業を休止した飲食店が続々とテークアウトや宅配に参入してきたからだ。

 さらに運動の大会や祭りといった大規模イベント、法事、町内会の集まりなど小口の仕出しも次々と中止に。「夏までには1億が飛ぶいきおいだ」と、厳しい局面を明かす。

 社員120人の雇用を守るため、アイデアを駆使して販路開拓に乗り出した。

 日替わりのビジネスランチ(450円)に3月中旬から地元食材を積極的に使うようになった。御手洗孝行料理長(61)は「常連が多く、見栄えや味に飽きがこないように工夫している」と安価でも、中身にはこだわりを持たせた。

 旅行に行きたくても、家に出られない人が多いはず。景山社長は「自宅で旅行気分を味わってもらいたい」と、今月中旬から駅弁の宅配も始めた。

 逆境は続くが「涙が出るほどありがたい」と、救いの手が伸ばされることも多々あった。地元スーパーからは、駅弁の販売スペースを提供してもらった。

 厳しい情勢を気に掛けて、わざわざ弁当の日を設けて社員分を注文してくれる企業、毎日弁当を注文してくれる個人客もいる。

 自社が少しでも地元生産者の助けになるべきだと考え、休校措置で給食への納入ができなくなったネギや牛乳を弁当のおかずに活用した。

 「このような時だからこそ、改めて地元での助け合いの必要性を感じた」

2020年5月27日 無断転載禁止