おもしろサイエンス(2) 虫が減ったら何がおこる?

鳥や魚がいなくなり湖の水質も悪くなる

 野菜や果物には時々、「虫が食った」あとがあります。中には虫そのものがでてきてビックリすることもありますね。このように虫の多くは植物を食べます。農作物も植物なので、食べられるのを防(ふせ)ぐために殺(さっ)虫(ちゅう)剤(ざい)がまかれます。最近の殺虫剤は魚や人には毒(どく)にならないよう改良されています。けれどもその殺虫剤によって虫がいなくなることで、虫を食べる鳥が減(へ)ったと海外で報(ほう)告(こく)されるようになりました。

 日本では主食が米なので、農地の多くが田んぼです。田んぼにまかれた殺虫剤は川に流れ、湖に流れこみます。川や湖には虫に近いミジンコなどの動物がいて、魚の餌(えさ)になっています。宍(しん)道(じ)湖(こ)七(しっ)珍(ちん)のひとつアマサギ(ワカサギ)は、ミジンコの仲間を主な餌にしています。アマサギが急に捕(と)れなくなったのが、昆(こん)虫(ちゅう)にとても効(き)く殺虫剤を田んぼで使い始めた年であることから、アマサギが減ったのは殺虫剤で餌が減ったからではないかと考えられます。

 虫が減ることでもうひとつ困(こま)ったことが起こります。水の中では珪(けい)藻(そう)や緑(りょく)藻(そう)など植物プランクトンと呼(よ)ばれる小さな植物がいて、ミジンコの仲間はそれを食べています。もしミジンコの仲間がいなくなると植物プランクトンを食べる動物が減り、水のなかで植物そのものやそれが死んだものが増(ふ)えて、水(すい)質(しつ)が悪くなってしまいます。

 農作物を食べる虫は何とかしなければなりませんが、全ての虫やその仲間が減ると困ったことが起こります。昆虫皆(みな)殺しではなく、害虫だけに効く殺虫剤が求められます。



東京大学大学院 新領域創成科学研究科教授 山室(やまむろ) 真澄(ますみ)
■略歴■

 大阪(おおさか)府出身。1960年生まれ。米国マサチューセッツ州ベドフォード高校卒、91年東京大学大学院博士課程(かてい)修了(しゅうりょう)(理学)。通商産業省工業技術(ぎじゅつ)院地質(ちしつ)調査(ちょうさ)所、独立(どくりつ)行政(ぎょうせい)法人産業技術総合(そうごう)研究所を経(へ)て、2007年より東京大学大学院新領域(りょういき)創成(そうせい)科学研究科教授(きょうじゅ)。

2020年5月27日 無断転載禁止

こども新聞