2人の「菅首相」

 自民党総裁選に立候補した3氏の好きな歌手や曲を比べると、個性が出ていて面白い。菅義偉官房長官は三橋美智也、石破茂元幹事長はキャンディーズ、岸田文雄前政調会長はサザンオールスターズの「涙のキッス」▼71歳の菅氏は演歌好きだが「歌が下手で小学校の頃は歌うのが一番嫌だった」。共に63歳の石破氏は1970年代のアイドルの曲を、岸田氏はサザンのヒット曲をカラオケで熱唱する。事実上の次期首相に選ばれた菅氏に、往年の大歌手が天国から祝い唄を送っているかもしれない▼三橋美智也と聞いてもぴんとこない世代も増えている。民謡で鍛えた高音に味があり、「平成の三橋美智也」と呼ばれる福田こうへいさんの訛(なま)り抜きイメージ▼苦労人と言われる菅氏。秋田の農家の長男で高校卒業後、家出同然で上京し就職。政治家までたどり着く道筋を「意志あれば道あり」と自己語りしてみせるのは、「庶民」を演じるイメージ戦略を思わせる。官房長官として長年、安倍晋三首相への「印象操作」に盾となってきた経験値の応用編▼新首相としてこれから「菅首相」と書くには既視感を伴う。10年前の民主党政権時代の菅直人首相と字面が重なり、「すが」と「かん」を取り違えれば、菅(勘)違いでは済まない。それにしても10年以上も「もうすぐ春ですね」と言われ続けて「涙にキッス」された石破氏の今後。明日があるさ。(前)

2020年9月16日 無断転載禁止