法的根拠示すべき 松浦市長「権利の乱用」発言

國分功一郎氏
 松江市役所本庁舎(松江市末次町)の建て替え事業に関する住民投票を求めた市民団体の動きに対し、松浦正敬市長が行政の手続き後に直接請求するのは「権利の乱用」と発言した問題で、哲学者で民主主義についての著作も多い東京大総合文化研究科准教授の國分功一郎氏(46)は、山陰中央新報社の取材に対し「発言の法的根拠を示すべきだ」と述べ、世論形成をゆがめかねない発言だと強く批判した。

 2013年に東京都小平市の都道建設計画を巡る住民投票に関わった國分氏は「権利濫用」は法的用語であり、使用できるのは極めて限定的なケースだと説明。松江市の場合、直接請求が乱発されたわけでも市の権利や利益を不当に侵害したわけでもないことから「こうした発言をするなら法的根拠を示すべきだ」と指摘した。

 市民団体の呼び掛けで直接請求に必要な署名数の4倍超となる1万4千人分が集まったことを踏まえ「市民は頼まれたり、報酬を得て運動しているわけではない。とてつもない労力を払わなければならないほど不満があったという意味を全く理解していない」とも指摘。「その意味を理解するどころか、面倒だという思いをもっともらしい言葉で覆い隠していると言わざるを得ない」と指弾した。

 市民が公的に異議を申し立てることができ、また政府がそれに責任をもって応える体制においてこそ健全な政治が成り立つと説いた米政治学者ロバート・ダール氏の考えを引き合いに「議会にさえ配慮していれば民主主義が成立すると考えるのは幻想だ。周囲の意見に耳を傾けなければ民主主義は専制化する」と強調。「市民の運動を『権利の乱用』と表現するようでは、今後の市民の世論形成に非常に悪影響があると思う」と述べた。

 松浦市長は市民団体が2日に市議会本会議で意見陳述した後、記者団に「直接請求の権利はあるが、行使するタイミングがあると思う。いろんな手続きが終わってから出されるのはある意味で権利の乱用と言ってもいい」と述べた。

2020年10月14日 無断転載禁止