音楽トリビア26の秘密 秘密(15)三つの短音階

開放感や緊張感 感動させる要素に

 6世紀(せいき)ごろから16世紀ごろまで、主に西洋の教会で歌われていたいろいろな旋律(せんりつ)は「白鍵(はっけん)」の七つの音で構成(こうせい)されていたといいます。これらは、対照的な2種類に分けられると気付いた音楽家たち。これら複雑(ふくざつ)な旋律を集約し単純(たんじゅん)にしたのが、長音階と短音階。だから音階とは、英語や国語の「文法」のようなもので、後から作られた「理論(りろん)」なのです。

音の間隔の長さに違い

 さて「長」と「短」、一体何が長く、何が短いのだと思いますか。

第1図 白鍵だけで弾けるハ長調とイ短調の自然的短音階
 二つの音階の音の並(なら)びを比(くら)べてみましょう。第1図を見てください。ドから始まる長音階は第1音と第3音、第1音と第6音、第1音と第7音の間隔(かんかく)が全部「長い」ですね。

 それに反してラから始まる短音階は、同じ3カ所の間隔が全部「短い」のが分かりますね。この音階は、後に「自然的短音階(しぜんてきたんおんかい)」と名付けられました。

 でも、当時歌われていた旋律の中には、第7音を半音上げたものもあったようです。さらに第6音と第7音が全音+(プラス)半音も離(はな)れるので、滑(なめ)らかさに欠けると思ったのか、第6音を半音上げた旋律も歌われていたようです。

第2図
 すると音階も、第7音だけ半音上げ、第2図にある「和声的短音階(わせいてきたんおんかい)」としました。

 上行(じょうこう)するときは第6音と第7音も半音上げ、下降(かこう)するときは二つの♯(シャープ)を取ってしまい、元の自然的短音階に戻(もど)るという荒業(あらわざ)を用いたのが、「旋律的短音階(せんりつてきたんおんかい)」です。

 私(わたし)はこれを学校の音楽の授業(じゅぎょう)で習った時、大変感動した覚(おぼ)えがあります。習ったときにはなぜ感動したのかよく分からなかったんですが、大人になってその訳(わけ)を知りました。この旋律的短音階、上に上(のぼ)っていくときは、緊張感(きんちょうかん)を生み、下に降(お)りるとき、開放感を感じさせるからです。皆(みな)さんはどのように感じられるのか、左のQRコードでぜひ聴(き)いてみてくださいね。

第3図 ハ長調とイ短調の旋律的短音階
 第2、3図を見てください。長音階の特徴(とくちょう)の一つなのですが、第4音から第7音の間隔が、間に半音がないので「長い」というのが分かりますか。和声的や、旋律的短音階は、さらに第3音から第7音までが「長い」ですね。特に旋律的短音階は、第3音から第7音まで、半音の間隔がないのが、人をとても緊張させるようです。この緊張と、下降のときの開放感との交代が、音楽が人を感動させる要素(ようそ)の一つと知られています。

第7音に「導音」の名前

 なぜこのような音階が生まれたのか、その秘密(ひみつ)は、第7音にあります。長音階が何か「きっぱり」しているのは、第7音と第8音(第1音のオクターブ上の音)の間隔が半音だからです。実はこの第7音には特別な名前が付いていて「導音(どうおん)」といいます。自然的短音階と違(ちが)って第7音と第8音の間隔を半音にすることにより、行き着いたように感じませんか。

 でも当時歌われていた旋律は、上行は自然的で下降は旋律的とか、上行は旋律的で下降は和声的など、三つの音階が自在(じざい)に用いられていたと思いますよ。

 (プラバホール芸術監督(げいじゅつかんとく)・長岡愼(ながおかしん))

2020年10月14日 無断転載禁止

こども新聞