レッツ連歌(要木木純)・11月26日付
何くれとかまってくれるうちが花 (出雲)吾郷 寿海
人前じゃいつも愚妻と紹介し (江津)花田 美昭
○居心地がいい便座のぬくもり
いつだって優しく迎えてくれますの(美郷)芦矢 敦子
○運がいいのも実力のうち
鉄砲は下手でも数を打ちゃあたる (江津)岡本美津子
○親の世話する前に子の世話
軒下に毎年やってくるつばめ (江津)江藤 清
○顔くもらせる上野介
パワハラをしかと反省いたします (松江)野津 重夫
いじめたら仕返しされると子に教え(松江)今井 ヒロ
女房はとっくにリモート始めてる (大田)加藤 妙鳳
○着ていく服がないと言いだし
爺ちゃんが俺のタンスをかき混ぜて(出雲)石飛 富夫
○じいさん一人猫も一匹
監督の演技指導を聞きもせず (出雲)飯塚猫の子
一つだけ言いたいことがあるんだよ(松江)川津 蛙
オレオレを話し相手に長電話 (松江)田中 堂太
婆さんや国勢調査違うでや (益田)石川アキオ
○自給自足で満天の星
爺さんもその爺さんも打った畑 (出雲)はなやのおきな
ご近所と物々交換できる仲 (美郷)源 瞳子
凍み豆腐凍みコンニャクも乙な味 (松江)森 笑子
○大事なことはここで習った
もがいても運動会はいつもビリ (大田)塩毛 千介
○とうとう総理まで登りつめ
早々と女性問題発覚し (川本)高砂瀬喜美
俯瞰的総合的に選ばれて (出雲)行長 好友
○特技なしでも絶好調です
おやじギャグおじ様ギャグに昇格し(浜田)酒井 由美
○泣くまで待つと決めた家康
歴史好き子には重荷の名を付けて (沖縄・石垣)多胡 克己
オンラインゲーム果てなし夜が明けて(出雲)岩本ひろこ
○恥ずかしながら帰還しました
あなたこそコロナに勝った勇者です(松江)小谷由紀子
○北極星のような存在
ストイック私の辞書にない言葉 (出雲)野村たまえ
日本にいるかもしれぬ救世主 (松江)相見 哲雄
○ぼける暇などあるはずもなし
還暦で想定外の子が生まれ (浜田)勝田 艶
子と孫にスマホ持たされ四苦八苦 (出雲)萩 哲夫
悶々とのたうち回る締め切り日 (浜田)山崎 重子
○もう一度だけ逆らってみる
何で俺お風呂がいつも最後なの (雲南)福場 仁一
渋滞にナビより勘で曲がる道 (益田)可部 章二
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前回、田中堂太さんの「朝寝して飯を食ったら昼寝して」の前句に、石田三章さんが付けた「泣くまで待つと決めた家康」を掲載したところ、三章さんから、家康の性格を表現したという句「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」を下敷きにしているので、「泣」は変換ミスではないかという指摘がありました。
締め切りに追われて、誤字脱字が多々あるこの瀾ですが、これは私がわざと変えました。あまりに原典そのままなので(本当は「家康」も言及しないで匂わせる程度にしたい)ひねってみました。「鳴」案は、前句の自堕落な人がなかなか仕事に取りかからないのを、ひたすら我慢して待つという付け方だと思いますが、「泣」案は、その人をわざとほっておいて失敗させ、後悔して泣き、改心するのを待つという、いささか陰険で意地悪な家康像です。
毎回、何句かは、選者がいじっております。他ジャンルの文芸と比べて、連歌のいかがわしいところですが、そこがまた連歌ならではの選者の楽しみ、独りよがりの点も多いでしょうが、どうかご容赦ください。
それでは、入選句の中から前句を選んで、七七を付けてください。
ここで、下房桃菴先生から、ご伝言です。来年、2021年「レッツ連歌新春特集」の前句は、
もの言わぬバーテンダーが生き字引
です。12月10日付の桃菴先生担当のレッツ連歌欄で改めてお知らせがあります。七七の付句を、早めに考えて、ふるってご応募ください。
(島根大教授)
2020年11月26日 無断転載禁止